俳句日記

十六夜薔薇

トモコ叔母ちやんは亡父ちちの妹ですが、亡母ははの葬儀の折に実家の庭先に咲くこの薔薇を眺めて呟きました。
「まだ咲いてんだ、ボロバラ……」
以来僕は、トモコ叔母ちやんが子供の頃から咲いてゐると言ふこの薔薇を「ボロバラ」と呼んでリスペクトしてゐるのでございます。
そのトモコ叔母ちやんもコロナ渦真つ只中の、丁度ボロバラの咲く時分に帰らぬ人となりました。俳句が上手だつたおばちやんと、一度も俳句の話をしたことがなかつたことが残念です。
そんな思ひで詠んだこの写真俳句を見て、「十六夜薔薇いざよひバラかもね…」と友人が教へてくれました。

今は僕が、
「まだ咲いてんだ、いざよひしやうび…」などと呟きながら、五月晴れの庭へかへつてゆくのでした。



くしやくしやのしやうびや叔母のくさしたる  彦